
視界を奪う白濁の霧。その向こう側から、人類の理解を超えた『何か』が姿を現した。
鹿児島県鹿屋市、輝北うわば公園。そこにあるのは星を観るための天球館……のはずだった。だが、この日我々を待ち受けていたのは、ロマンチックな天体観測などではなく、映画『ミスト』の絶望感と、高﨑正治が放つ狂気的な建築美だった。
「攻めすぎた」デザイン
建築家・高﨑正治。建築界において、これほどまでに賛否を巻き起こし、観る者の視覚を暴力的にジャックする男は他にいないだろう。彼の作る建築は、もはや「建物」という概念を通り越している。それは巨大な機械であり、あるいは沈黙する生命体だ。
そんな、高﨑正治の建築を求めて今回やってきたのが、鹿児島県鹿屋市。山頂にとある作品があるという。ワクワクがとまらない。

見えてきた。あれが今回の目的地。
みるみる「モヤ」に囚われていく目的地を見ながら、ワクワクよりも不安感がだんだん強くなっていくのを感じていた。
映画「ミスト」の世界へようこそ。

目の前にあるはずの景色が、どんどん霧に塗りつぶされていく。どうやら、異世界に突入したようだ。
一歩進むたびに、背後の現実が消え、未知の領域へと足を踏み入れているような錯覚に陥る。
車を停めて少しずつ着実に歩いてとどりついた、そこで我々を待っていたのは、天球館という穏やかな施設などではなかった。

墜落した異星の遺物
そんなことを思わせるかのように、今回の目的地である「輝北天球館」が、霧の向こうからヌッと現れた。重力や構造計算といった人類の常識を嘲笑うかのような、鋭利なコンクリートの塊である。
宇宙をテーマにしているはずの輝北天球館だが、このシチュエーションでは「星を観るための場所」には到底見えない。それは、数万年前にこの銀河に墜落し、そのまま誰にも気づかれずに風化した「別の銀河の遺物」そのものだった。

階段の角度、支柱の突き出し方、スロープのうねり。 視界が数メートルに制限されたこの世界では、その不規則な造形が牙を剥く。平衡感覚は霧の中に溶け出し、自分がどこに立っているのかさえ危うくなる。
霧を味方につけて、訪れる者の精神を揺さぶりにきているのだろうか?なんとも、にくい演出をしてくれる。




鹿児島県鹿屋市輝北町。ここは、かつて環境庁主催の『全国星空継続観察』で日本一に輝いたこともある、いわゆる「星空の聖地」である。本来なら、何も遮らずに広がっている大パノラマに宇宙の神秘が降り注ぐ、ロマンチックの極みのような場所である。
そして、今我々の目の前に広がっているのは、星はおろか自分の足先すら怪しい『白い絶望』である。宇宙に最も近いはずの場所で、宇宙から最も切り離されている。さすが、ハイカラダイブ。天候に恵まれないのはいつものことだけども、最終的には異世界に迷い込むことになるとは。

星は見えなかった。けれど、確かに「異世界」を見た。
青空の下で見る輝北天球館も、きっと素晴らしいだろう。幾何学的な造形が太陽に映え、SNSに流れてくるような景色がそこにはあるはず。しかし、霧の中でしか出会えない、神々しいまでの怖さと美しさがここにはあった。
そんな、ハイカラスポット。
おまけ

輝北天球館の休館日は月・火曜日。訪れたのは木曜日で開いてるハズだったんですけども、悪天候の場合は予告なしに閉館になるとのことで、中は入れず。まあ、当たり前か!(笑)
むしろ、悪天候の極みなので、この天気で訪れようと思う方がいないのが現実かもしれない。だけど、意外と霧(雲の中だと思われる。)のタイミングは異世界を堪能できるのでオススメ。ただし、車は前が見えないし、歩くと数m先は見えないので、かなりの注意が必要。
アクセス
輝北天球館
所在地:〒899-8511 鹿児島県鹿屋市輝北町市成1660−3
営業時間:10:00 - 18:00(月・火定休)
(※悪天候の際は予告なしに閉館の可能性もあり。)
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(年末の祭典ハイカラダイブ大賞の参考にさせていただきます。)
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