ハイカラスポット探訪マガジン

北九州B級スポット

牙を抜かれた海獣。折尾・鷹見神社で「日向ぼっこ」をする、かつての爆弾。【北九州B級スポット】

学生たちの笑い声が響く折尾の町。その穏やかな日常からわずか数歩、鷹見神社の静寂に足を踏み入れると、そこにはおよそ神域には似つかわしくない「鉄の塊」が鎮座していた。かつて海を恐怖に陥れた死の兵器・機雷。なぜに神社にあるのか、鷹見神社を探索。

折尾、鷹見神社

北九州市八幡西区にある折尾。10以上の大学・短大・高校が集中している学生の町として知られている。そんな町に、かつて海を震え上がらせた「本物の爆弾」が鎮座しているのをご存知だろうか。

学生の街、折尾。駅を降りれば、賑やかな通学路と再開発で新しくなった街並みが広がる。しかし、そこから少し坂を上がり、住宅街の奥へと足を踏み入れると、空気の色がふっと変わる場所がある。それが今回の目的地、鷹見神社だ。

静寂に包まれた神社の境内に足を踏み入れて少し進むと、参道の脇にそれはある。参道の脇、木々の影にひっそりと置かれたそれは、初見では『古い灯籠の台座』か『大きな石碑』に見えるかもしれない。だが、近づいてその肌理に触れれば、それが石ではなく、鈍い光を放つ『鉄』であることに気づく。戦後、何十回、何百回と繰り返されたであろう祭りの喧騒も、この鉄球はただ静かに見つめてきたのだろう。

表面には、触れれば爆発するスイッチである「触発雷管」の突起は突き出しておらず、丸くむしろ少し可愛らしいフォルムである。神域の穏やかさとは対極的とも言えるような、海中で船を待ち伏せし、一瞬で鉄の巨体を海の底へ引きずり込む、死の装置。それがなぜ今、ここにあるのか。

この機雷自体は、1904年の日露戦争で使用されたものであり、当時の東筑中学校(現東筑高校)の卒業生から国家安泰のためとして奉納されたものである。

そして、第二次世界大戦末期、日本中の金属が武器を作るために没収された「金属類回収令」。お寺の鐘や家庭の鍋までもが溶かされる中、当然この巨大な鉄の塊も軍のターゲットとなったようであるが、軍から贈られた品だとして、供出を免れて現在に至るそうだ。もし当時、供出されていたら、この機雷は溶かされ、再び誰かを傷つけるための弾丸になっていたかもしれない。それを阻んだのは、皮肉にも『これは軍から贈られた神聖なものだ』という、軍自身の論理を逆手に取ったロジックだった。この場所にあることは、奇跡的な『矛盾』の結果なのかもしれない。

かつては敵艦を沈めるための兵器だったものが、今では「平和を動かさないための重石」のように見えてくるから不思議である。折尾のこの機雷は「負の歴史を飲み込んで、静寂を守る」役割を担っているのかもしれない。

激動の時代をくぐり抜け、今はただ参道の木漏れ日を浴びて丸くなっているその姿は、なんだか日向ぼっこをしている鉄の塊のようで、少しだけ愛おしく思えてくるのだ。

そんな、鷹見神社。

seach&edit by QQmagazine

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
ハイタロウ

ダイバー1号。 近代化建築初心者 廃墟・珍スポット・B級スポット探索が大好物。 時間があれば、変なスポットに行ってます。

  1. 牙を抜かれた海獣。折尾・鷹見神社で「日向ぼっこ」をする、かつての爆弾。【北九州B級スポット】

  2. 【個性的なオートバイ神社】『ショーエイさん』が迎える、檍オートバイ神社【鹿児島県】

  3. 【珍スポット】行列のできるバス停?【福岡県】

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP