映画『すずめの戸締まり』の世界へ。風化と錆びた鉄が時を止める大分県の美しき廃墟「旧豊後森機関庫」【大分県】

かつて多くの人々が行き交い、役目を終えて静かに眠りについた建造物。そこに自然の力が少しずつ溶け込んでいく姿は、どんな人工物よりも贅沢な芸術品だ。
今回は、まるで異世界に迷い込んでしまったかのような、圧倒的な存在感を放つ大分県の美しい廃墟スポットをご紹介。
風化と大自然が作り出す、計算され尽くしたアート

今回やってきたのは、大分県玖珠町にある「旧豊後森機関庫」。
ここは映画「すずめの戸締まり」の冒頭、一番最初に「お返し申す!」をした”後ろ戸”があった場所と雰囲気が酷似していることから、ファンの間でも聖地と言われている場所だ。
ぱっと見は作中の場所とは全然違うように思えるが、円形を描いている建物と設置されている”扉”がちゃんと相まって、映画の1シーンに見えてくるから不思議である。

豊後森機関庫が完成したのは1934年(昭和9年)。蒸気機関車のための扇形機関庫として誕生した。久留米と大分のちょうど中間に位置するこの場所は、険しい峠を越えるための石炭や水の補給基地として重要な役割を担い、最盛期には1日に5,000人以上が利用するほど町を大いに栄えさせたという。
しかし、その歴史は決して美しいだけではない。第二次世界大戦末期には米軍機の機銃掃射を受け、今でもコンクリートの壁にはその生々しい弾痕が残されている。 1971年に機関庫としての役目を終え、一時は解体の危機にも瀕したが、地元の人々の熱意によって保存され、現在では国の有形文化財にも登録されている。
それでは肝心の建物全体を見ていきたいと思う。
「これを作れ!」と言われても絶対に人間には不可能な、風化だからこそ作れる自然美。ランダムに割られた窓ガラスの破片に、差し込む光がなんとも言えない哀愁を醸し出している。

壁面を見てみると、あえて人間の手を加えないからこそ出来上がる、蔦が作り出す大自然の壮大なアート。コンクリートの壁を緑が浸食していく様子は、まるで建物自体が呼吸をしているかのようである。

長年の雨、そして容赦のない直射日光を浴び続けてきた鉄。
これ以上に色を変えることが難しいほどに、極限まで錆び尽くした鉄の質感は、ほんと、たまらない。かつてここで蒸気機関車たちが轟音を響かせていた時代の記憶が、その赤錆の中に閉じ込められているかのよううでもある。

24時間、この場所でこの風景を肴にすれば、いくらでも酒が飲めてしまう。そんなロマンがここにはある。 朝、昼、晩、どんな時間帯に訪れても、その瞬間ごとに違った表情を見せてくれる、感動しかない廃墟スポット。
そんな、ハイカラスポット。
アクセス
旧豊後森機関庫
所在地:〒879-4405 大分県玖珠郡玖珠町岩室242−7
見学時間:24時間
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